日本酒

美味しい日本酒を選ぶ方法 日本酒の作り方や種類をご紹介

 日本酒に関する知識があると食にぴったりな日本酒を選ぶことができたり、自分の好きな日本酒が分かるようになります。この記事ではそんな日本酒の作り方や種類をご紹介します。

日本酒の分類

お酒は醸造酒、蒸留酒、混成酒の3つに分類される

 世界中にはビールやワイン、ウイスキーやテキーラなど実に様々なお酒の種類がありますが大きくは醸造酒、蒸留酒、混成酒の3つに分類する事が出来ます。

醸造酒

 穀物や果実の糖を酵母によってアルコール発酵させたもの。三大醸造酒の日本酒、ビール、ワインが代表的です。
 ワインは原料に糖分が合まれているため、そのまま酵母を加え発酵しますが、日本酒は米、ビールは麦のデンプンを糖に分解してから、酵母によって発酵させます。アルコール度数は5~15度程度が多いです。

蒸留酒

 蒸留酒とは、その名の通り醸造酒を蒸留したものです。焼酎、ウイスキー、ブランデー、ウォッカ、ジンなどがあります。
 蒸留をするので当然アルコール度数は当然高くなり40%以上が普通です。蒸留酒は蒸留する事によって糖質やタンパク質などの有機成分が含まれておらず、アルコール度数も高いため長期の保存が可能です。

混成酒

 混成酒は、醸造酒や蒸留酒に香料や果実、糖を加えてつくったものです。梅酒、リキュール、みりんなどが代表的で、梅酒は8~20度、リキュールは15~55度、みりんは12~15度程度が多いです。

日本酒のタイプは純米と本醸造の2つに分類される

日本酒のタイプは純米と本醸造の2つに分けることできます。原料が米、米麹だけなら「純米」、醸造アルコールが入ると「本醸造」となると覚えれば簡単ですね。

  • 純米…原料は米、米麹
  • 本醸造…原料は米、米麹、醸造アルコール

そしてこの純米と本醸造の中でさらに吟醸や大吟醸などの名称に分かれます。

名称原料精米歩合
純米大吟醸米、米麹50%以下
大吟醸 米、米麹、醸造アルコール 50%以下
純米吟醸酒 米、米麹 60%以下
吟醸酒米、米麹、醸造アルコール60%以下
特別純米酒米、米麹60%以下
純米酒米、米麹
特別本醸造酒米、米麹、醸造アルコール60%以下
本醸造酒米、米麹、醸造アルコール70%以下

日本酒のラベルの読み方

 日本酒のラベルには 「精米歩合」、「醸造アルコール」 、「酸度」など様々な情報が記載されています。
 お店のお酒メニューやラベルを見て、サッとお酒を選べる事ができるようにラベルに記載されている言葉をご紹介します。

精米歩合

 この不要な部分を削り取ってお米を丸く磨けば磨くほど雑味のない美味しいお酒になります。そしてどの程度磨いたかを示すのがこの精米歩合です。
  精米歩合は玄米に対する重量比率で表します。例えば精米歩合が50%以下という事は、玄米から半分以下の重量まで磨いたという事になります。

青空と稲穂

醸造アルコール

 醸造アルコールは、主にサトウキビを原料として発酵させた純度の高いアルコールです。と言ってもサトウキビの香りや味はほとんどありません。缶チューハイなどにも入っているんですよ。
 添加するアルコール=醸造アルコールと言うと安酒で悪酔いしそう、人工的な酒で体に悪そうとイメージするかもしれませんが、それは全くの誤解です。醸造アルコールは発酵によって造られた純度の高いアルコールですので悪酔いの原因ではありません。逆に、この醸造アルコールを加える事によって辛口で、軽く、クリアな味わいとなります。そう、いわゆる「飲みやすい」ってことですね。
 醸造アルコールを添加したお酒は料理との相性が良く燗酒にも適しています。猫も杓子も「純米」ではなくて一緒に頂く食事などによっては醸造アルコールを添加した「本醸造」も選択肢に入れても十分良いという事です。

とっくりとおちょこ

日本酒度

 辛口なのか甘口なのかを数字で表した尺度のことで「+」と「-」を用います。もろみを水に浮かべて計測しますが、糖分が多い(比重が大きい)程沈むのでマイナスとなります。
 よく居酒屋さんのお酒メニューに「+2」とか、「-2」などと表記されていますので、こちらを指針にお酒を選ぶのが最も簡単なお酒の選び方だと言えます。

+6.0以上+3.5〜+5.9+1.5~+3.4-1.4〜+1.4-1.5~-3.4-3.5~-5.9-6.0以上
大辛口辛口やや辛口普通やや甘口甘口大甘口

「甘いものは重い(沈む)、だからマイナス」と簡単に覚えられますね。

酒造好適米

 日本酒の原料は「米」ですが、普段私達が食べているお米ではなく、「酒米」と呼ばれる食用米を品種改良されたお米を使います。その米の中でも産地や品種銘柄などについて、農水省の指定を受けた米を「酒造好適米」と言います。
 米粒が大きく、精米しやすい、でんぷん質の含有量が多い、吸水性がよく糖化されやすいなどが特長で山田錦、五百万石、美山錦などが代表的な酒造好適米です。

酸度

 日本酒に含まれるコハク酸、リンゴ酸、乳酸などの酸の量の事です。
 1.3~1.5mpが平均値で、それ以上なら濃厚辛口寄り、以下なら淡麗甘口寄りとなります。なぜかと言うと酸が味を引き締めるから。つまり「酸=キレ」という事です。
 この酸度は日本酒の中のコハク酸、リンゴ酸、乳酸の量を相対的に表す数値なので、数値が高いほど日本酒は濃厚な味となります。

杜氏名

 酒造技能検定で一級技能技能士を取得した人で、お酒を造る際の総責任者のことを杜氏(「とじ」or「とうじ」)と言います(ちなみに酒造りの技術者を酒造技能者、その他は蔵人と言います)。
 元々杜氏は農業がメインで冬になると日本酒造りを行う季節労働者です。酒造りの季節になると蔵人達と共に蔵に住み込み酒造りを行います。
 地方ごとに日本酒の造り方が異なり、現在では20以上の杜氏集団が形成されています。日本三大杜氏と呼ばれるものは以下の3つです。

杜氏地方特長
南部杜氏岩手県岩手県花巻市の杜氏集団。杜氏の数は全国最多で、現在でも300名を超える。東北の硬い米から、柔らかな酒を造るのが特長。
越後杜氏新潟県新潟県中南部の杜氏集団。現在は170名ほど。以前は全国各地に出稼ぎに出ていましたが、現在では、酒どころ新潟の屋台骨を支え地元での酒造りが主体となっている。淡麗辛口なお酒が特長。
丹波杜氏兵庫県兵庫県篠山市周辺の杜氏集団。現在は40名ほど。灘の蔵元が多くの出稼ぎを受け入れたことが始まりで、灘の日本酒を支えてきた。ミネラル分豊富な水から濃厚で辛口の酒が特長。

使用酵母名

 米のでんぷんは麹によって糖分となり、その糖分をアルコールにするのが酵母です。
 酵母は多くの種類があり、使用する酵母によって日本酒のアルコール度数、甘辛、味わい、香りなどに大きく作用していきます。
 この酵母には「きょうかい酵母」、「自治体酵母」、「蔵付き酵母・野生酵母」、「花酵母」などがあります。

自治体酵母

 地方自治体の研究機関で開発された酵母です。気候や酒米の特徴など、その地方での酒造りの条件に対応できることが多い酵母で山形の寒い気候でも発酵でき、爽やかな果実香が特徴の山形KAや、秋田県のオリジナル酵母で大吟醸酒、純米大吟醸酒造りに向いているAK-1(秋田流・花酵母)などがあります。

蔵付き酵母・野生酵母

 酒造・酒造場に住み着いている酵母です。蔵のある土地に住み着いていた野生酵母であり、蔵の壁や床に棲みつき繁殖したものです。蔵ごとによって異なる日本酒になるのはこの酵母の影響も考えられます。

花酵母

 東京農大が製品化した酵母。高い香気特性を有しています。

他におさえておきたい日本酒の言葉

他におさえて知っておくともっと食が楽しくなる日本酒の言葉をご紹介します。

生一本容器からそのま樽詰めすることを指していましたが現在は単一の製造場で造られた純米酒の事。
樽酒杉樽に入れて杉の香りをつけた酒。鏡開きやお祝いの席で用いられることが多い。
にごり酒醪(もろみ)を目の粗い布で軽くこした酒。炭酸ガスを含んでいる。
おり酒醪をこした後にタンクの底に沈殿しているおりの混ざった酒の事。白くにごりフレッシュな味が特徴。販売期間・数量が限られていることが多い。
凍結酒酒をシャーベット状に凍らせた商品。
発泡酒炭酸ガスを吹き込んだ酒で、アルコール度数は低いものが多い。
生酒上槽した後も、瓶詰め後も火入れをしない新鮮さを残した酒。
新酒日本酒の製造年度は毎年7月から翌年6月と定められている。この年度内に出荷されたもの。

日本酒と温度

燗と冷やの表現と温度

 日本酒の飲み方で特徴的なのは燗や冷やなど、広い温度幅で楽しめる事です。ボディーのしっかりした純米酒が冷やしたときは雑味に感じても、燗にすると旨味に感じたりすることがあります。
 よく聞く言葉としては「燗(かん)」と「冷や」だと思いますが、日本人はとっても繊細です。以下のように5℃ごとに表現が異なります。ドヤ顔でこの表現を使うのは野暮ですが、知識として知っていると面白いですよね。
 特に冷えについての表現は「雪」や「花」がついていて四季の豊かな日本らしさを感じる素敵な表現です。

  • 日向燗(ひなたかん) → 30℃近辺
  • 人肌燗(ひとはだかん) → 35℃近辺
  • ぬる燗(ぬるかん) → 40℃近辺
  • 上燗(じょうかん) → 45℃近辺
  • あつ燗(あつかん) → 50℃近辺
  • 飛びきり燗(とびきりかん) → 55℃近辺
  • 雪冷え(ゆきひえ) → 5℃近辺
  • 花冷え(はなひえ) → 10℃近辺
  • 涼冷え(すずひえ) → 15℃近辺

日本酒のタイプと温度

 色々な温度で楽しめる日本酒。酸の少ないお酒は冷やして飲むのがおすすめですが、日本酒のタイプと温度の組み合わせは以下のようになります。

  • 香りの高いタイプ → 10~16℃ ぬる燗も可だが甘酸が平衡する。
  • 軽快でなめらかなタイプ → 6~10℃もしくは氷温近辺 飲用的温帯が狭い。
  • コクのあるタイプ → 10~45℃ 飲用適温帯が最も広く温度によって変化を楽しめる。
  • 熟成タイプ → 7~25℃ 飲用的温帯が広い。

日本酒の作り方

 最後に日本酒の作り方をご紹介します。
 酒処へ旅をすると酒蔵見学のチャンスに出会う事があります。少し知識を入れて見学にのぞむとより楽しめます。

 日本酒の原料である米は糖分を含んでいないため、第1段階として麹によってでんぷんを糖化させ、第2段階で酵母によって発酵させます。
 ワインやビールとは異なり、日本酒は同じ容器の中で糖化と発酵が同時に行われます(並行複発酵)。大きくは以下のような工程を経て、美味しい日本酒が生まれます。

・精米…玄米の外側の糠部分を削る

・洗米…細かい糠を水で洗う

・浸漬…米を冷たい水につける

・蒸米…米を強い蒸気で蒸す

・製麹…蒸し米に黄麹菌の胞子を振りかけ繁殖させる

・酒母…米、水、麹に酵母加え酒母を造る

・仕込み…3回に分けて仕込まれる

・醪(もろみ)…じっくり発酵させる

・上槽…醪をしぼる

・おり引き・濾過…上澄みを取り出し、濾過をする。

・火入れ…殺菌と酵素の活性を止める

・貯蔵…数か月寝かせる

・加水…原酒はアルコール度数が20%ほどあるため加水する。

・瓶詰・出荷

以上、旅を豊かにする 日本酒の雑学でした。
今まで銘柄名や都道府県だけを見て日本酒を選んでいたあなた、これからはもっと繊細に日本酒が選べますね。

≪参考≫
日本の名酒事典 講談社 発行者:鈴木哲
日本酒の教科書 新星出版社 著者:木村克己